可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「パパがちゃんと連れて行ってくれる?」
「ああ。メイドの言うことを聞いて、部屋に戻っていてくれるか?」
「うん! 任せてっ」

 アリムは言うことを聞いて、自分付きのメイドのもとに駆けていく。

(ア、アリムーっ)

 今は彼の存在が有難かった。男の人に抱き上げられている状況が落ち着かないし、感じるたくましい両腕にアイリスは身体が縮こまる。

「だ、旦那様――」
「まだ逃げる算段でも?」
「わざわざ旦那様にさせているのが申し訳なくっ」
「自分で歩く案はなしだ。君の体力が、そうはやく戻るとは思えない」

 アイリスの身体がかすかに震えているのが、寒さだけではないと彼は感じ取っているようだ。

「で、ですが大公様に」

 居候の一人であると意識して『旦那様』と呼んでいるが、アイリスにとって、ヴァンレックは『ヴァルトクス大公』だ。

(そんな人に騎士みたいに運ばせるなんてっ)

 玄関に上がるまであと少し。アイリスは大急ぎで考える。

「……私が自分で歩くのがだめというお話ですよね、それなら……あっ、他の騎士に頼みますからっ」
「何?」
「大公様のお手をわずらわせないで済みますし――ひぇ」
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