可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 自分のためではない。

 彼のために、この身体に向き合っていこう。

(いつまでいられるか分からないけど、そう短くはないはずだから)

 来年に彼は七歳になる。

 今よりも起きている時間も、活動量も増えるはずだ。それに対応していきたいとアイリスは強く思った。

 すると、真顔だったアリムが、不意ににこっと笑みを浮かべた。

「ありがとうアイリス、あなたは純真な人だね」

 まるで年上に言われたような違和感を覚えた。

 けれどそれは、掛け布団の上から抱き締めてきたその小さな体を感じた途端、アイリスの中から消えてしまう。

「アイリス、優しくて、心があったかくて本当に大好きだよ。僕が、きっと守ってあげる」

 胸がいっぱいになった。

(あ……)

 目から、ぽろりと何かが落ちていく。

 寂しい幼少期を過ごした『彼女』の記憶が、アイリスの脳裏をたくさん流れていった。

(そっか、この身体は――)

 家族に抱き締められた思い出が、ない。

 小さな手でも大好きだと言われて、抱き締められて、涙が出るほどに嬉しいと身体が感じているのかもしれない。
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