可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 今は掛け布団でぐるぐる巻きにされている姿だ。そのうえ子供に慰められるようにいい年をした大人が抱き締められ、泣いている。

「ひぇ」
「『ひぇ』……?」
「た、大公様っ、こ、これはっ」

 恥ずかしさのあまり、声も裏返る。

 ふうむ、とヴァンレックが顔を顰め、よしと決めたようにツカツカと歩み寄ってきた。

「君は俺の妻だ。大公様と呼ぶのはおかしいだろう」
「ハッ。す、すみません旦那様」
「そう呼ばれると、どうも雇い人に呼ばれているような感覚になるのは、どうしてだろうな」

(そのような感覚で呼んでおりますが?)

 王命で無理やり夫婦になった。

 ひょんなことから子育て要員として、アイリスは彼と契約した。彼女の気持ち的には雇われと、雇い主だ。

 夫婦ではなく一時的な協力関係だと知っているのに、どうしてヴァンレックは少し不服そうなのか?

「どうして泣いた? アリムが泣かせるはずはないと思うが」

 ヴァンレックがそばに片膝をつく。

 断言できるのも不思議だ。
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