可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「ありがとう、ございます……」

 正面からベタ褒めされ、なんとも気恥ずかしくてアイリスは視線を逃がす。ブロンズやメイドたちが、初々しい反応だとほほえましそうに見守っている視線にも気付かなかった。

(デザイナーってすごいわね。同じ攻めたドレスでも、これだけ上品に仕上げてしまうなんて)

 アイリスは横にある大きな鏡を見やる。そこには妖艶ながら、結婚した女性の品格を感じさせる黒布の多いドレスを着た美女がいた。

 これはダンス用のドレスを仕立てることが目的だ。

 踊れたら素敵だろうなぁと、アイリスの目から見ても感じる。

(くぅっ)

 自分が、まったく踊れない事実が恨めしくなった。

 前世ではダンスなんて頭にさえなかった。

 生きるのに必死で、女性的な優雅なものにだって縁がない。

(いえ、『アイリス』のおかげで優雅さとは縁が結ばれたわけだけど……でも、体力作りのためのダンスの練習よね? それなのにわざわざデザイナーまで呼ぶなんて、大公様はどうされちゃったの?)

 本格的すぎて困惑している。
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