可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 互いに一歩も動かず、漂う沈黙が胃にキリキリとくる。

(目を見開いて固まっていらっしゃるわ)

 もしや、そんなに微笑みも似合わなかった?

(それはそれでショックすぎるわ)

 ううん、そんなことより、謝らなくては。アイリスは必死に自分の行動を考えた。ひとまず、謝ろう。笑顔に驚いた可能性を考え、口を開く。

「……た、大公様、申し訳ございません」

 ようやく出た声はかなり細くなってしまったが、誰もが身動き一つしていない空間では、よく響いた。

 ヴァンレックが状況をゆっくり飲み込むみたいに、少しずつ顔を顰めながら首を傾げていく。

「……なぜ、謝った?」
「わ、私の顔面に衝撃を受けただろうと思いまして」
「はっ? いや、別に見惚れてはっ――」
「気持ち悪いへたな笑顔でごめんなさい!」

 アイリスは必死になって詫びた。

 ヴァンレックが「は」と言って固まる。ブロンズも、メイドたちも今にも『は』と聞こえてきそうな表情を浮かべる。

「……気持ち悪い?」
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