可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「くぅっ、ほんっとうにごめんなさいっ。私、誰かに『全力で仲良くしたいですー』みたいな笑顔を振りまいたことが、ほんと、なくってっ」

 アイリスは顔を隠すように両手を上げ、彼のほうを見られないまま白状した。

 記憶の中の『アイリス』は社交をうまくわたれるような女性ではなかった。そして『強い女にして長女の有栖』も、可愛らしさをイメージしてにっこりと笑いかける――という経験は、ない。

 媚びるような笑顔に嫌悪感を抱かれていたら、どうしよう?

「不快感を抱かせてしまったのなら本当にごめんなさ――」

 その時、アイリスはものすごい風を感じた。

 え、と疑問に思って目を向けると、一気に距離を詰めたヴァンレックに両手を優しく包まれた。

「そんなことはまったくっ、ない!」
「え? ない? 不快ではなかったということですか?」

 拍子抜けして、つい心の声のままに尋ね返してしまった。

「不快に感じるわけがない! ……か、可愛かったっ」
「えっ」
「本当だっ、可愛らしかったっ。全然気持ち悪くなどはない、不慣れならどんどんやっていけばいい……俺が練習相手になるから。とても、本当にとても似合っているから」
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