可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 付け足したい本音を思ったら引きつり笑顔になってしまい、アイリスは速やかに口を閉じる。

 こちらに目を戻したヴァンレックが、「ふっ」と小さく笑った。

「君は、嘘も苦手らしい」

 どの口が言っているのでしょうか、と相手が『大公様』でなかったら言い返していただろう。

 彼こそ正直者だろう。見つめてくる目は上機嫌だし、どこか柔らかな視線はずっと『似合っている』と伝えてくる気もして、アイリスはこらえきれなくなった。

「旦那様に金銭の負担をかけてしまったのに、なんだか嬉しそうですね」

 思わず照れ隠しで言い返してしまった。

「そうだな。ドレスを購入してよかったと改めて思った」
「えっ?」
「それからアリムより、俺が先に見られたことも嬉しいと感じている」
「えぇっ」

 なんでそういうふうに感じているのだろう。

 その時、二人の騎士がサロンの出入り口に立った。

「ダンスの講師が到着されました」

 ハッとして視線を向けると、騎士たちに促されて一人の貴婦人が進んでくる。
< 169 / 381 >

この作品をシェア

pagetop