可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「あ……っ」

 廊下からフロアへと出た子供が、アイリスを見てピタッと止まる。

 子供の表情が固まったのを見て心配になった。もしかして顔合わせは、別時間に予定が組まれていたりしたのだろうか?

 こちらから声をかけていいのか迷ってブロンズを見ると、彼が言う。

「坊ちゃま、こちらは本日いらっしゃるご予定ですとお伝えしていた、旦那様の奥様となられたアイリス様です。ご挨拶を」

 すると、子供はじりじりと後退する。獣耳と尻尾が徐々に膨らんでいく。

(警戒しているのかしら?)

 ブロンズが前に出ようとした。注意しようとしているのかもと察知したアイリスは、右手を彼の前に出し、子供の前に進み出た。

「はじめまして、私はアイリスよ」

 目の前の子供に『結婚してあなたの母親になるの』なんて急に言うのもためらわれた。大公様自身の意思決定を聞いていなので、妻だと名乗る勇気もない。

「は、はじめまして。ぼ、僕はヴァルトクス――いえっ、アリムです!」

 子供が後半、一呼吸で言い切った。

(か、かわい~! 緊張して、間違えて家名を言ったのねっ)
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