可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 今日から早速ヴァンレックが参加することになった。

 見に来ることを決めた際、そもそもすぐに仕事に戻る予定は立てていなかったという。

 レベッカ伯爵夫人は緊張したようだが、それもすぐに和らぐ。

「それが基本姿勢です。リズムよく、いち、に――」

 ダンスの練習が始まったが、アイリスは『リズムに乗る』ということにまず苦戦した。何度も彼の足を踏んでしまう。

 はじめは肝が冷えていたものの、何度も繰り返すと、失敗しても笑ってくるヴァンレックに、恥ずかしさのあまり言い返すようになっていた。

「だから言ったじゃないですかっ、踏む自信があるって!」
「まぁまぁ。痛くも痒くもないから」
「どうしてそう上機嫌なんです? 旦那様が大きすぎるのもやりづらいですっ」
「男性相手なら、それが当然だよ」

 まるで子供に言い聞かせるみたいに、彼の声は優しい。足を踏んでも、うまくできなくて進行がのろのろでも、どんどんヴァンレックの機嫌は良くなっていく。

 彼は練習を開始してからずっとにこにこしていた。
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