可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
(こんなにもダンスができない大人が初めてすぎて、微笑ましい感じなのかしら? ……私としてはにこにこ笑顔が見慣れないのですけれどっ)

 アリムじゃないのに、と思って目をそらす。

 そうしたら、またこう言われる。

「アイリス、俺を見て」
「っ」

 彼の顔を見ていないと、声の優しさがよく分かって頬がぶわりと熱を持つ。

(――こんなの、慣れっこないっ)

 ヴァンレックは相手を我が子だと勘違いしているのではないか。そう勘ぐってしまうほど、優しかった。

 子供をあやすように練習を進行してくれる。

 彼が言っていた通り、教え方はとてもうまかった。現在は国王になっている人が、それだけ目をかけて弟を大切にしていたのだろうな、とアイリスは感じた。

 惹かれてはいけないのに、ダンスで近付いた物理的距離感と同じく、彼女は彼との交流の濃度も含め早急に縮まっていくのを感じていた。

 ◇∞◇∞◇

 その夜、アイリスは珍しくアリムの就寝支度に居合わせていた。
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