可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「えっ」

 どきっとして、彼の頭を撫でる手が止まってしまった。

 アリムがにっこりと笑う。

「アイリスが楽しいのなら、それでいいんだ」

 たまに、彼が大人びたことを言っているように感じるのは、六歳とはいえこの大公家の跡取りとして半年は育てられたからだろうか。

(正直――楽しかったわ)

 あれだけ嫌だと思っていたのに、次のダンスの授業が今は楽しみになっている。

 アイリスの体力があまりないせいでヴァンレックに支えてもらったし、数十分でレベッカ伯爵夫人が終了を告げた。

 授業自体は初日とあって短かったが、そう感じないくらいに『楽しい』の感想で胸は満足感に満たされている。

「ヴァンレック――」

 ふっと、そんな声が聞こえた気がして、アイリスは回想から引っ張り上げられた。

「ううんっ、パパも楽しかったと思うよ! 鈍いから、いい変化があったようでよかった」

 よくは分からないが、アリムは満足したのかようやく眠ってくれるみたいだ。拒否していた掛け布団の中に潜ろうとする彼を見て、アイリスはそれを手伝ってあげた。
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