可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「どこか行ってよ、ぼ、僕にかまわないでっ」
「私は仲良くなりたいんです。小公子様はこれから何かをする予定なのですか?」

 相手は大公の子供なので、ひとまず敬語で話しかける。

「パパが戻ってないんだったら、とくに何もすることはないよっ」
「じゃあご一緒してもいいですか?」
「何言ってるの!? も、もう勝手についてきてるじゃないかっ」

 廊下の左側には美しい造形の窓、右手には部屋や開けた空間があった。

 騒がしさに気付いたのか、使用人たちが作業の手を止めて「なんだ?」「何事ですの?」と廊下を覗き込んでくる。

「どこに行こうとしているのか、気になるじゃないですか」
「つ、ついてこないでっ。僕は部屋に戻るのっ」

 少し恥ずかしそうに言って顔を背けた彼の様子を見ていると、パパが帰ってきたと思って玄関まで駆けつけた光景が蘇った。

 嬉しそうにしていたから、きっと会いたかったのだろう。

(会えなくて残念だったという寂しそうな顔で、『ついてこないでっ』と言われたら、ついていきたくなるでしょう)
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