可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 アリムとの食事は世話をするのも楽しい。でも、獣の姿になったからという理由で、ヴァンレックが牢で一人過ごしているのだと思うと、食欲はあまり湧かなかった。

(使用人に壁を作っていたのは大公様自身なのね)

 壁、というか一定の安全な距離を使用人たちに与えている、のだろう。

 制御不能のリスクがあること、満月には人の姿でいられないこと――どこが壁があるよそよそしい空気だと感じたのは、ヴァンレックが原因だったのだ。

「アイリス、大丈夫? 体調が悪いの?」
「ううんっ、騎士の方々に伝言をするのを忘れていて。少しだけ離れるわね」
「いいよ! メグがお肉を切り分けてくれるから」

 メグというのは、アリム付きのメイドの一人だ。

 彼女が代わりにそばについてくれて、アイリスは一度、ダイニンルームを出て壁に身を隠した。

「ふぅ……」

 壁に背をもたれて一息吐く。

 警備についていた二人の騎士が、心配そうに見てきた。

「大丈夫ですか?」
「ええ。子供は空気を敏感に感じ取るものでしょう? 私のせいでアリムの食事まで進まなくなってしまったら、大変だから……」

 どうにかにこっと笑い返した。
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