可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 でも、アイリスには何もできない。

 結局何かしてやれる方法など、持ち合わせていない。

(私は、彼が決めた伴侶でさえないから)

 ヴァンレックがたった一人、ここから最も離れた棟の最上階の牢に入っているのに何もできないことが悔しかった。

 ――いや、悲しい。

 何かしてあげたいと思う。

 でも、もし会いに行ったとしたらどうなる?

 獣人族は迎え入れた伴侶、そして血を分けた家族に対しては安全。彼はすでに心に決めた愛した女性がいて、子供もいる。

 もしアイリスが今の感情のままに『行きたい』と思い、向かい、彼が理性を飛ばしてアイリスに危険なことがあれば、我に返った時にヴァンレックはどう思うだろう?

(それだけは、嫌)

 彼に迷惑をかけたくない。

(期間限定の同居みたいなものなのに……何もできることがない自分にないという事実的な立場も、すごく、苦しいわ)

 思っている以上に彼の存在が自分の中で増している。

 何もできないことが、悲しい。

 アイリスは唇を噛んでこらえた。騎士たちのほうもまた、ヴァンレックが一人で耐えて牢にいるという現状が悔しいし、とても嫌なのだと伝わってきたから。

 ◇∞◇∞◇
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