可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 持ったままぼうっとしてしまっていたらしい。慌てて拾い上げようとしたら、小さな手が上から触れてきて、アイリスを止めた。

「パパのことでしょう? そんなにアイリスが悲しそうな顔をしていると、僕も悲しくなってくるよ」

 膝立ちして近付いたアリムが、アイリスの頬に手を添える。

 子供の温もりをじんわりと感じた瞬間、なぜだが魔法にでもかかったみたいに、アイリスは心の防波堤が崩れた。

 ――悲しい。

 自覚したらこらえきれず、目が潤んだ。

(ああ私、悲しむほど大公様のことを気にかけているんだわ)

 せめてアリムには心配をかけたくなくて、目に力を入れる。

「うん、あなたパパのことよ。私、すごく気になるの」

 理由は分からない。でも、何もできないまの嫌だと心が叫んでくる。

 ヴァンレックを一人にしておきたくない、と。

「でもそんなことをしたら、迷惑をかけちゃう」

 子供相手なのに、アリムに触れられていると、不思議と前世で両親や妹に打ち明けた時のように、本音が口からどんどんこぼれ出た。
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