可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 急に説教されて、耳がきーんっとした。

 でも、その声はものすごく聞き覚えがある。体積が増えた分声が大きく聞こえるが、間違いない。

「……旦那様?」

 呼びかけると、鉄格子の向こうにいる狼が、ぎこちなく顔を背ける。その仕草はどこか人間じみていた。

 狼はアイリスを優しく床に降ろすと、両前脚を鉄格子の中へと引き戻した。

 改めて見てみると、その〝牢〟はかなり大きい。

 鉄格子も、アイリスが握りきれるか分からない太さがある。

 そして、その内側にいる大きな狼は、上部に設置された小さな窓枠から注ぐ夕焼け色に、淡い黄金色を濃く浮かべた艶やかな毛並みを揺らしていた。

(すごく、大きいわ)

 狼だと聞いていたから、どんなものだろうと想像していたが、確かに姿は狼であると言える。しかし、馬車よりも圧倒的に大きい。こんなものが敵軍から突っ込んできたら、確かに恐ろしいだろう。

 狼は所在なさげに視線を泳がせる。一度立ち上がり、アイリスの視線から逃げるようにぐるりと回って、どこにも行けない牢であると確認して諦めがついたみたいに、すとんと腰を降ろした。
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