可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「――……ああ、俺だ。ヴァンレックだ」

 長い逡巡の間を置き、狼が答えてきた。

「窓が開いているようですけど、寒くないですか? 大丈夫ですか?」
「まずそれを質問するか? この身になると、寒さはそう感じない。君のほうこそ大丈夫か?」
「え? 私は別に、はっくしょんっ」

 不意に寒さを覚えて、アイリスは自分の身を抱いてぶるっとする。

「まったく。アリムが送り届けたんだな、無茶なことを」

 ヴァンレックのそんな声が聞こえたかと思うと、大きなもふもふとしたものが鉄格子から伸びて、アイリスの背をすっぽりと覆う。

 狼が横になり、尻尾で包んでくれたのだ。

「あ、温かいです」
「それはよかった。送るならそれなりに用意してからすればいいのに……いや、そもそも送るだなんて、いったい何を考えているんだか……」

 右前足で鼻の上を押さえ、彼が何やら独り言をごちる。

「やっぱりこれ、アリムがやったんですね」
「あっ、いや、その――」
「獣化を持った獣人族って、こんな不思議な能力まで持っているんですね! すごいです!」
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