可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 彼の声に、ハタと顔を上げた。

「俺たちは夫婦だろう。二人きりなのに旦那様と呼ぶのもおかしいし……だから……そろそろヴァンレック、と呼んでもいいんじゃないか?」

 人間の姿じゃないと、何を考えているのかうまく読み取れない。

 けれど、彼のその言葉には、不思議と彼の気持ちがこもっているように感じる。

 そう勘ぐりそうになって、アイリスは慌てた。

「わ、私が旦那様を名前で? いえっ、畏れ多いですからっ。一雇われ枠ですしっ」
「やはりそういう意味で『旦那様』と呼んでいたんだな?」
「うっ」
「君が心の中で『大公様』と呼びながら、人がいる前では『旦那様』と呼んでいることも薄々感じてはいたが、正解だったようだ」
「大公様は大公様で……」
「アイリス」

 名前を呼ばれた一瞬、ぶわっと肌がすべて熱くなる感覚がした。

「え、えっ?」

 なんで、どうして、彼の声で呼ばれただけでこんな反応が出てしまったのだろう?

 普段と彼の呼び方が変わった気がする。いや、だんだんと胸を甘くくすぐりだしていた変化が、今、明確になっているような感覚というか――。
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