可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 確かに、一理ある。

「そうですね、人間としての名前を呼んでいたほうが理性を引き留められそうです」
「分かってくれたようで助かる」
「あの、ところでヴァンレック様、私、鉄格子の隙間からそっちに行けそうなんですけど、そばに行ってもいいですか? 尻尾より本体のほうが温かそうです」
「君の警戒心が心配になってきたな……」

 そんなこと言われても、近付いてアイリスは気付いたのだ。

(ぽかぽかするっ)

 これも獣人族の不思議な力の一つだったりするのだろうか。

 てっきり危ないなど一度は反対してくるかと思ったのに、ヴァンレックは右前脚の爪を隣の鉄格子に引っかけた。何をするのだろうと見ていたら、彼は平然と爪一歩本で、太い鉄格子を軽く曲げた。

「…………すごく、強い爪ですね?」
「そこから入るといい」

 立ち上がると、寒さが身に染みた。

(本人の許可をもらったことだし)

 アイリスは迷わず鉄格子の少し広がった隙間から中へ入ると、彼の腕のすぐ後ろに、身体の横を埋めるようにしてぽすんっと座った。
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