可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「ヴァンレック様、尻尾ください」
「警戒心ゼロのうえ、図々しさまで増したな」
「生きようとする本能でしょうね。もう、日が暮れます」

 気付けば、上部にある小さな窓の向こうは夜の闇が下りていた。

(きっとまた雪が、たくさん降るんだわ)

 神獣の不思議な力によって、この地は夜にたくさん雪が降るという。暮らしていた中で自分の目で確認した限り、メイドたちの話はすべて的中続きだ。

「月明かりのあるなしは関係ないんですね」
「ふふ、俺は狼男じゃないよ」

 この世界にも狼男の話はあるんだな、となんとなく思った。でも、彼が笑ってくれて、アイリスの胸は喜びに染まる。

「今回の満月は、ヴァンレック様が一人ほっちで過ごさなくて、よかったです」
「ああ、そうだな。ありがとうアイリス」

 ただ名前を呼ばれただけなのに、心地いいと感じる。

 大きな狼と、それに比べてとても小さい人間。

 それなのにアイリスは、昨日最後に会った時よりも、二人の距離感がぐっと縮まったように感じた。
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