可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 この流れならいけるのではと思って、アイリスは遠慮なく両手でもみもみし、顔面を埋めてみる。

(やばいわ。すごく埋まる)

 もふもふだ。そして、かなりさらさらでもある。

「これはアリムとはまた違った素晴らしい感触!」
「なんだって?」

 アイリスは声に出ていることも気付かず、彼の金色の毛並みに顔をこすりつけた。

「ちょ、やめなさい」

 焦った声が上から聞こえる。

「怖くないです本当です、はぁっ、なんて素晴らしいのっ」
「その悩ましい声はっ、本気でやめてくれてっ」

 大きな狼が何やら身悶えしている気がする。

(……恥ずかしいのかしら?)

 アイリスは両手でしっかり毛並みを握ったまま、彼の顔のほうを見上げた。

「褒め上手なんだな、その、うん……もういいから……この姿を君が気にしていないことは、よく分かったから……」

 蚊の鳴くような声だった。狼は完全に恥ずかしがっていた。

 何やらアイリスの胸のあたりできゅんっと鳴る。

(可愛いわ)

 もし、彼が今、人間の姿だったとしたら、いったいどんな表情をしているのだろう?
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