可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「深夜まで起きていたことがないと言っていたな」

 んんっと咳払いのようなものを口にして、彼が言ってきた。

「聞いていたんですか?」
「この姿だと、たいていのことは聞き逃さない」

 なんと、日頃からいい視力も含めて、獣の姿だとより能力値が上がるみたいだ。

「そうなんですね」
「君は話していると……いい具合で緊張が抜けていくな……」
「それで、なんと言おうとしたんですか?」
「話して時間を潰そうと提案しようとしていたんだろう? そうしよう。君のこを話してくれ」
「私のこと、ですか?」
「腰を据えて長らく話す機会は、なかったからな。夫婦なのにおかしな話だ」
「まぁ、そうかもしれませんね」

 一般的な〝夫婦〟とは違っているので、仕方がない。

 でも――。

「ヴァンレック様も聞かせてくださいますか?」
「ああ。君のことを教えてくれるのが前提だ」
「なんだか押しが強いですね……」

 こうして会話していると、確かに眠気がこなさそうだ。起きていられる自信も出てきたアイリスは、時間を潰すべく、彼が希望する『自分の話』をすることにした。
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