可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「……そうか。話してくれてありがとう」

 尻尾が優しく彼のほうへ引き寄せてくれた。

「こうして一人で過ごさない満月の日は、兄と一緒に暮らしていた以来だ」

 ヴァンレックは、いくつか思い出を教えてくれた。

 城の地下には【獣化】する王族専用の特別な部屋があるそうだ。幼い頃、兄は狼の姿なったヴァンレックを見て『チビ』と指差して笑った。今と変わらないな、いやもっと小さくなった、と。

 姿を気にしないと伝えようとしたのだろう。

 ある日は犬用のおもちゃを持ち込み、ある日はお菓子と犬用おやつを好きなだけ食べた。発案はすべて兄で、毎月暇はしなかったそうだ。

「兄弟か親なら暴走の確率も下がる。成長するに従って俺の力が増したせいで、何度か彼には暴走を止めてもらった。勇敢な人だよ」

 その部屋に両親が入った、という話はなかった。恐らく両親は一度も付き合ったことがないのだろう。

 でも、普通はそうかもしれない。

「勇敢なお方ですね。そして心底優しいお兄様です」
「ああ、優しい人だよ」
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