可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 ほめられ慣れていなくて、くすぐさたいくらいに恥ずかしい。

「そうそう。冬景色の中に降り立った女神のよう――ぐへっ」

 男優のように演技っぽくそう語りだしていたシーマスが、次の瞬間、飛んできたベンチと共に向こうへ吹っ飛んだ。

「シ、シーマス!?」

 アイリスは慌てて通路の塀に駆け寄る。

 獣人族は身体は強いとは聞いている。木刀なのに対戦で吹き飛ぶのだって見たことがあるし、そうあってもたいていかすり傷程度で済む。

(でもまさか、あんな重いベンチが飛んでいくなんてっ)

 すると騎士たちがとある方向を見て、一斉に青ざめた。

 そこから現れたのは、ヴァンレックだ。

「――人の妻を、くどくな」

 向かってくる彼に対して、騎士たちはじりじりと後ずさっていく。

「だ、団長、おかえりなさいませ……」
「シーマスはあれですよ、ただのほめ言葉――」
「お前たちの『ほめ言葉』とやらも聞いたが?」

 ヴァンレックの迫力は、静かにブチ着れている感じで怖い。

 しかしアイリスとしては、歩いていく彼の右手にある可愛らしいケーキ箱にも、目が滑っていく。

 雰囲気と不一致というか、彼のイメージではなさすぎる箱のデザイン……。
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