可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 アイリスが慌てて視線を走らせると、そこには先程まで話していたシーマスたちをまとめて持ち上げているヴァンレックがいた。

(な、なんて怪力……)

 止めようとしたようで周囲には、無残にも転がったシーマスたちの同僚、騎士たちの姿がある。

「アイリスは俺の妻だ。狙おうなどと思うなよ」
「は、はい、存じ上げています……」
「下心があったわけでは……」

 あんなにしゅんとしたシーマスも、初め見る。他の騎士たちも陽気な者が多いぶん「下心はないんです」「誤解ですぅ」とか細い声で答えている様子も見慣れないものだ。

 そもそもどうしてヴァンレックは、あんなに怒っているのか。

 それに――。

「どうして急にここへ来たのかしら」
「奥様の匂いを追いかけていらしたのでしょう」

 アイリスは、訝ってブロンズを見た。

「感覚が鋭くなると、玄関先からでも奥様の声や関連する話題も拾います」

 そういえば、どこにいてもヴァンレックは帰ってくると、真っ先にアイリスのもとにくる。
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