可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 自分のために買ってきてくれている理由を、深くは考えないようにしよう。

 協力者として尊重してくれているだけかもしれない。

 アイリスは、すでに彼に対して敏感に反応するようになっている自分の胸に手をあて、落ち着くために深呼吸した。

 ◇∞◇∞◇

「――パパばっかりずるい!」

 アリムがそんなことを言ったのは、唐突だった。

 朝、ヴァンレックの見送りを終えて玄関ホールに戻った彼は、立ち止まり、ぷくっと両頬を膨らませた。小さな両足を踏ん張り、獣耳と尻尾が少し膨らんでいる。

(ぷんぷんしている様子が、とてつもなく可愛いわ)

 アイリスは真剣に取り合うべく、顔には出さないことを決める。居合わせたメイドたちも瞬時に口を固く引き結んでいた。

「何も特別なことはなかったと思うけど」
「アイリスは、パパの言葉に癒やされてるみたいだったよ」

 どきっとした。普通の反応を心がけたつもりだったが、息子よりも喜んでしまっていただろうか?

(子供のアリムには癒やされたように見えたのね。気をつけないと)
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