可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 すると彼が、少し身をはなして、見下ろしてくる。

「俺のほうからも君に頼むつもりだ。一緒に捜してくれるというのなら、この手が使えるから」
「この手……?」

 ヴァンレックが、駆け寄ってくるシーマスのほうを見た。

「団長なんつう速さで駆けるんですか! 獣化持ちの力、相変わらず半端ないですねっ」
「軍馬より能力を引き出した俺のほうが速い。シーマス、俺の服を頼んだぞ」
「へっ?」

 ヴァンレックがアイリスから手を離す。

 それはあっという間の光景だった。ヴァンレックが目を閉じたかと思ったら、彼が銀色の光に包まれる。

 光りそのものになったみたいに服がすり抜けて、彼の軍服とコートが雪の上に落ちる音がした。

 続いて、銀色の光は吹雪く中でまばゆい光を放ちながらみるみるうちに大きくなり、それがバキンッと空気を震わせた時には、あの大きな金色の毛並みをした狼が、雪の上を踏みしめて立っていた。

 後ろからアイリスを追い駆けていた使用人たちが、驚いて足を止める。

 庭園から男性の使用人たちと飛び出してきたブロンズも、目を見開いた。
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