可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「君は意外性に富んでいるな。運動はできないようだが、素質は悪くないように思える」

 それは前世では結構動いていたからだろう。

 体力や筋力が追いつけば、あの頃みたいに自然に動ける予感もしている。

「しっかり掴まっていてほしい」
「任せてください!」
「では――走るぞ」

 ぐんっと狼が走った。

 遠くに見える森へ向かって一気に駆ける。騎士たちは驚くどころか、嬉しそうに自分たちもと全力で走り出す。

 屋敷の者たちが歓声を上げていた。

「団長の軍服は頼んだ!」

 シーマスが後方のブロンズたちに元気な声を響かせている。

「お任せを! どうぞアリム様をよろしくお願いいたします!」

 そう答えるブロンズの声も、ぐんぐん離れていく。

(なんて、速いの)

 これが狼になった彼の見てイメ風景なのだろう。アイマスは吹く風を白く染める降雪の風景を、魔法みたいに進んでいくように思えた。雪の大地をどっどっと蹴る音は、聞いたこともない大きさだ。

「森のほうへ行くのですかっ?」

 駆ける音と風音に負けないよう、大きな声で聞いた。
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