可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「ああ。この姿になると〝同胞〟の匂いや気配が、よく分かる。アリムは森だ。たびたび俺の不在時に敷地内を散策していた時も、俺が見つけた」

 アイリスは、歓喜していた全員の様子が頭に浮かんだ。

(だからみんな、あんなに喜んでいたのかしら)

 血を分けた息子を察知できるヴァンレックが、アイリスも今はとて頼もしかった。

 そうかからず狼は森に突入した。ここは邸宅の私有地を外から目隠しするみたいに、敷地入り口からしばらく続く道の左右を覆っている緑地だ。

(すごい。木とほぼ同じ大きさだわ)

 アイリスは、左右を流れていく木のてっぺんの近さに、新鮮な感覚がした。

 おかげで恐怖はほとんど薄れたと言ってもいい。

 ヴァンレックの運動能力も彼女を安心させた。

 狼はものごい速度で進んでいくのに、不規則にはえた木々の合間を、超高速で正確にくぐり抜けていくのだ。

「アリム!」

 そう発言したのがアイリスには聞こえたのだが、狼の口からは同時に獣の咆哮が上がっていた。
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