可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「まったく君は――」

 彼は何か言っていたみたいだが、アイリスは雪の上に降りるなり、アリムのもとへ駆け出していた。

 アリムは何が起こっているのか分からないみたいだ。

「アイリス、どうして泣いて――」

 徐々に戸惑いを見せて、アリムがたじろぐ。

「アリム!」

 両手を伸ばし、アイリスはその小さな子供を力いっぱいかき抱いた。

 抱き締めたその身体は、温かい。自然とたくさんの涙がアイリスの頬を伝い落ちた。

「ああ、神様、ありがとうございます……」

 こらえようとしても嗚咽を止められなかった。

 今腕に抱き締めたこの子が、心から大切なのだと気付いてしまったから。

「ア、アイリス、こんな中で泣いちゃったら顔が大変なことになるよ」
「うぅ、私だって分かってるの」

 子供の前で泣くなんて、本当は我慢したかった。でも、安心したら、どんどん涙が溢れてくるのだ。

「本当に心配したのよアリム。無事でよかった。あ、あなたに何かあったらと考えたら、生きた心地がしなくて。ずっとそばにいられなくて、ごめんなさい」

 わぁわぁと泣きながら伝えるアイリスに、アリムが呆気に取れたのか、珍しく言葉はない。
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