可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
(急に断言してどうしたのかしら?)

 ヴァンレックはかなり早い段階で狼の姿になれたのかもしれない。遠い記憶過ぎて、話しながら思い出せたのだろう。

「そうなんですね」
「ああ、そうなんだ」

 ヴァンレックが腕を組み、うんうんとうなずく。

 すると仔狼が、するりとアイリスの腕の中から抜け出す。

「待ってて、姿が行き来できるか試してみる」

 彼は空中で両手足を踏ん張る。

(――か、かわっ!)

 アイリスは両手で自分の口を覆った。

 何が面白くないのか、ヴァンレックが不貞腐れた顔でじーっと見てくる。

(今見るべきは私じゃなくて、息子のがんばりでしょ)

 アイリスは彼に視線で合図を送った。するとヴァンレックは、困ったような顔をして声に出して答えてくる。

「それは分かっているが……」
「分かっているのなら、こちらを見てください。助言とかないんですか?」
「自分の感覚で掴んでいくしかない、んじゃないかな?」

 ヴァンレックが言いながら視線を逃がしていく。
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