可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 チェスの駒を動かすまでの考え時間が増えると、アリムがおやつを食べる回数も右肩上がりになった。

 これはどう見ても関心が菓子に向き始めている。

 そうアイリスが感じて休憩を提案すると、強がりも恥ずかしがりもせず、アリムは嬉しそうに「そうしよう!」と言った。

「この大きなクッキーが一番美味しいよ、それからジャムが乗ったこのミニパイは――」

 彼は自分が好きな菓子を紹介してくれる。

 かなり打ち解けたみたいで、選んでアイリスに差し出したりした。

 正直、最後に休んだホテルから、ここまで二時間の馬車移動だった。食べたものは落ち着いているから、甘いものはいくらでも入る心境だ。

「もっと食べてっ」
「ありがとう」

 アイリスの食べっぷりを気に入ったのか、アリムは楽しそうだった。

(よほど大事にされているのね)

 彼が大好きなお菓子が数種類もたっぷり乗った円卓の上。そこにあるティーカップも、子供用に小さく作られたものだ。

「勝手なことを言ってごめんなさい」

 アイリスはブロンズにこそっと告げた。
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