可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「アイリスは左手を握って!」
「ふふ、いいわよ」

 アリムと話していると緊張感から少し解放された。

(大丈夫。アリムに楽しんでもらうことは、死守するわっ)

 心に決めて、アリムの間を挟んでヴァンレックと三人で歩き出す。

 きっと気が休まらない時間になるに違いない。

 アリムのほうにもさぞ注目が集まるだろう――そう考えていたのだが、歩いてすぐ雰囲気が変化するのを感じた。

「おぉ本当だ……!」
「我らが大公様もついに……」
「ありがとうございます」

 気のせいか、一番注目されていのはアイリスだ。そのうえ見知らぬ老人から合掌されたりと、かなり感謝されている空気を感じる。

(……思っていたのと反応が違うわね?)

 刺々しい視線はいったいどこだ、とつい探してしまう。

「んんっ。アイリス、ここには大きな書店が二つある。第二王都だと言われるほどに規模もあり、品も揃っているんだ。行きがてら案内をしてもいいか?」

 アイリスがじーっと人々の会話のほうを観察し始めたところで、ヴァンレックがアリム越しに手を引き寄せ、自分に注意を引く。
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