可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「はい、私は初めてですので嬉しいです」

 有難いです、と言おうとしたのに、うっかり本心が口から出た。

「そうか。俺も、君を案内できて嬉しい」

 アリム越しに顔を見せてきたヴァンレックの柔らかな眼差しに、アイリスは顔が熱くなるのを感じた。

(何かしら、すごく甘い空気を感じるような……)

 するとアリムが、ヴァンレックの手を引く。

「パパ、僕も初めてなんだけど?」
「歩くのは初めてだな」
「アリムは何度か来たことがあるの?」
「じっとしているのもつまんなくって、巡回の馬車に乗せてもらったの」

 先日、吹雪いているのに一人で平気に外へ抜け出した一件が頭に浮かんだ。

 意外と好奇心旺盛で勇敢さも秘めているみたいだ。

 アイリスは雑談を楽しみながら歩いた。

 話していると、周りの視線を意識せずに済んで助かった。

 ついでに彼女は、ヴァンレックが注意をそらした場所の壁にかかった地方紙の切り抜きも見逃した。

【大公様が一番目に知らせてくれた吉報!】
【〝俺の伴侶だ。その人がいれば暴走はしない〟】
【暴走化の完全な制御が可能になったと騎士団員も大喜び。大公様は近いうちに、まずここへお披露目に連れてくると通達し――】
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