可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 こんなのが自分の家族なのかと、改めて強烈に失望した。

 ヴァンレックとアリムと比べると差がありすぎて、恥ずかしいほどだ。

「ああ、でも、そうよね……わざわざ私宛にしているんだから、一番に見るのは私だと想定して書いたわけよね。そして以前の従順な『私』だったら、代わりに『大公様』に謝って、フォローして、きっと夫を連れてくる、と」

 思い通りになりたくない。

 吐き気がした。こんな家族がいることをヴァンレックに知られたくない。この屋敷の人たちにもバれたくない。

(でも――)

 何一つ反抗できなかったアイリスにとって、この無礼極まりない招待状と手紙を、そのままヴァンレックに見せることは復讐になる。

 アイリスは便箋に額を押し付けて、用紙を強く握った。

(あんな家族に、この家の何一つだって与えたくないわ)

 勇気を奮い立たせる。

「…………少しでも長く、こんな日々が続けばいい、なんて望みすぎたわね」

 いい気分なんてぶち壊しだ。

 ヴァンレックに、面倒事も迷惑もかけたくない。
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