可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 どうすればいいのか分かっている。アイリスが、大公妃でなくなれはいい。

 こんな面倒な家族がいるかぎり、ヴァンレックの足を引っ張ってしまうだろう。アリムに何かあったらどうするのだ。

 それなのに――。

「どうしたらいいか分からない」

 目が潤み、出たアイリスの声は情けなく震えていた。

 思考は完全に停止した。

 こんなこと経験になくて、戸惑いのあまり気付けばベルを鳴らしていた。

「失礼いたします、奥様いかがされ……まぁっ、奥様!」

 ぼろぼろと泣いているアイリスを見て、メイドが悲鳴を上げ、エプロンスカートを両手で握って駆け寄る。

「お、おねが……ブロンズを、呼んで……」
「は、はい、かしこまりました」

 すぐにと告げ、メイドは走って出ていった。

 全速力で駆けてくれたのだろう。ほどなくしてブロンズが到着した。

「奥様、いかがされたのですか」

 彼は状況を見るなり、血相を変えて駆け寄り、ハンカチでアイリスの涙を拭いにかかる。

 さすが獣人族だ。先程のメイドも含めてすでに数名同行しており、ブロンズが温かいお湯とタオルの用意を指示していた。
< 297 / 381 >

この作品をシェア

pagetop