可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 とんでもないことが起こっているとでも聞いたのだろうか。

 二人のメイドが出ていってすぐ、慌ただしい足音が近付いたかと思ったら、五人の騎士が顔を出す。

「うわっ、ほんとに奥様が泣いてる!?」
「やかましいですよ。今すぐ旦那様に――」
「それはだめ!」

 アイリスは、ブロンズの手首を掴んで止めた。

「わ、私、ヴァンレック様と離縁、しなくちゃいけないかもしれなくて。ブロンズにまずは相談してから、心を決めようかと、思って」

 大粒の涙をこぼしながら、嗚咽の合間にアイリスはどうにか伝えた。

「な、何いいいいいい!?」

 騎士たちが、揃って大音量の絶叫を上げた。

「離縁!? どうして!?」
「奥様、嘘ですよね!?」
「心を決めてはいけませんっ!」

 騎士、メイドに続いて、あの冷静なブロンズまで全力で言ってくる。

「わ、私だって、嫌」
「え?」
「ここに、いたいの。でも、ヴァンレック様に、迷惑かかるの、嫌で、ううぅっ」

 アイリスは泣き崩れた。

 プロンズが固まったそばから、戻ってきたメイドたちがお湯でしぼったタオルをアイリスの肌にあて、服のうえから腕や肩、背を撫でる。
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