可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「へたな演技はやめなさい。情けない。お前の母は頭は打たなかったのに、大袈裟だな」

 つまり目の前で頭意外を打つのを、ただただ見ていたと?

(最悪だわ)

 呆れてものも言えない状態で見つめ返すと、父と母に向かってその目はなんだと、少し動揺を見せて二人が何やらいろいろと言ってくる。

(これが両親で、あれが妹? 人違いよ。私の名前はアイリスではなくて『有栖(ありす)』――うっ)

 ずきんっと頭に猛烈な痛みが走った。

 知らない記憶が頭の中へ一気に流れ込んでくる。

『うぅ、もう嫌……これ以上耐えられない……』

 見えたのは、真っ赤な髪を背中でに波打たせた、ドレスを着た少女だった。そのドレスも赤のゴージャスなものだ。

(あっ)

 彼女がアイリスだ、と直感した。

 これまで従順で、虐げられ続けていた彼女の光景が怒涛のように頭の中に入ってくる。

『誰か、助けて……』

 記憶の中の〝彼女〟は、苦しくてつらくて、もう限界だったのだ。

 ガラスが割れるような音が頭の中で響いて映像が途切れる。

(ああ、もしかしてあなた――精神的に死んでしまったのね)
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