可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 彼が『無礼』だと口にした理由が大公ではなく、アイリスの立場からエティックローズ侯爵家を非難しているものと思わなかったから、驚いてしまった。

「ずいぶん苦労しただろうに。それでもアリム様が気に入るくらいまっすぐな心で、よくいてくれたね。あのお方が人族にも心を開いてくれて、私もとても嬉しいよ」

 リッジソロミュー公爵は感動したみたいに、目尻を指で撫でる。

 言い方は気になったものの、それ以上にアイリスは動揺していた。

「まさか……知っているのですか?」

 いつ、どこで。もしかしてヴァンレックに聞いたのだろうか?

 しかしリッジソロミュー公爵は、目尻の皺を優しい形に変えただけだった。アイリスは彼もまた〝事実〟を把握している人間なのだと悟った。

「奥様は……」
「彼女は知らないよ。とはいえ、アリム様の話を聞いて察しただろうねぇ」

 また、アリムだ。

 なんとなく頭の中で引っかかりを覚えた。

 けれどその正体がなんであるのか考えるよりも先に、彼が心地のいい優しい声でアイリスに言葉を続けてきた。
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