可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 ヴァンレックが仲良くしたいと全身で示してくるのは、信頼してくれているから。

 アイリスと、同じ気持ちだからではない。

(彼は一人の女性にしかそういう気持ちを抱けない人で、初めての顔合わせで『君を妻として愛するつもりはない』とは、はっきり言われているもの)

 頭では理解しているのに、ハッとした一瞬に、彼の柔らかな眼差しが特別だと語りかけているのではないかと錯覚してしまう。恋している自分が怖い。

 こんなにも自然と恋愛事を考えるようになった事実にも、悶絶しそうだ。

 ヴァンレックの正直者なところも好ましかった。

 そんなつもりではなかったのに好意を持たれてしまっても……そう困る彼の姿は、見たくない。

(だから、私が平気なふりをしなくちゃ)

 彼に迷惑はかけたくなかった。

 だからアイリスは、自分の気持ちなんて知らない、という嘘を突き通さなければならない。

「座っていてもいいので、ヴァンレック様を見て衣装を絞り込んでいってもいいですか?」
「着る本人が隣にいたほうがしやすいだろう」
「遊びの後に準備に付き合わせてしまうのも……」
「夫婦なんだ。俺のほうが体力もあるし、いいように活用してくれ」
「そういうことでしたら」
「服はたくさんあるから、僕が候補を挙げるね!」

 アリムがアイリスのスカートに飛びついた。

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