可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 アイリスはアリムを両手で抱っこする。

「大公邸で楽しく暮らしているわ」
「っ」

 にこーっと笑いかけた。少し首を傾げれば、肩を抱き寄せているヴァンレックの頭があたるので、この距離感だけでじゅうぶんだろうと考えていた。

 それなのに、唐突にアリムみたいに後ろから両腕が回される。

「え」

 アイリスが声を上げたのと、人々が「まぁっ」「おぉっ」と注目を強めたのは同時だった。

 彼らの視線の先は、アイリスの上にあるヴァンレックの顔に向いている。

「ああ、俺はアイリスと満たされた夫婦生活を送っている。巡り合えたことに感謝しているんだ」

 アイリスは、ヴァンレックが頭の上でにーっこりと笑っているのが見えた。

 その表情を確認して、みんなが幽霊を見たような反応をしているのは、彼が笑顔であるためだと理解する。

 夫婦生活はうまくいっているんだなと、男性たちも悪くなさそうに言う。結構仲睦まじいのではと女性たちが興奮気味に話しだす。

 アンメアリーとライノーアル伯爵の結婚式なのに、誰もがアイリスたちを注目している。

「――ふっ、お姉様が無事だなんてね」
< 327 / 381 >

この作品をシェア

pagetop