可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「結婚は人生に一度の晴れ舞台なのに」
「だからこそ適しているんじゃないか? 報いを受けるべきだ」

 隣から、容赦のない相槌が返ってきた。

 先程の騒ぎもあってか、誰もが目を向けない状態で彼の存在を強く意識している様子だった。

 ――ヴァルトクス大公の機嫌を損ねた。

 そんな花嫁を形ばかりでも彼の前で祝っていいものか。

 そう悩むように、新郎新婦の誓いの口付けの拍手も小さくまばらだった。最前列に腰かけている父と母は、挙式なんてどうでもいいから今すぐにでも終わってほしいと思っているみたいに、恥をかいた顔を下に向けっぱなしだ。

「気になるか?」
「いいえ」

 ヴァンレックがちらりと見てきたので、アイリスはふるふると首を横に振る。

「どうにもできないかもしれないと思っていたので、今の両親はああですし、妹のほうもすっかり大人しくなって、なんだか不思議な感じです」

 ヴァンレックはあの両親を、完璧に黙らせてくれた。

 多くの貴族を自慢げに招いた状況が、かえって目撃者を増やした。今後はアイリスに接触するのは難しいだろう。
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