可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 どうして上機嫌なのか、アイリスには分かりかねた。

 彼は自分に特別な気持ちを抱くことはない。

 そんなアイリスの〝思い込み〟が、彼女の選択肢を縮めていたから。

 けれど、やはりアイリスの視線は彼に戻ってしまう。そこにはステーキに真っ先手をつけたヴァンレックがいた。

(軍服じゃない彼は、剣なんて握らなそうだわ)

 見ていると、彼に似合うものが一つ足りないことに気付く。

「ワインはよろしいのですか?」
「俺も、君やアリムと同じ果実ジュースでいい」
「楽しまれるとおっしゃっていたので、てっきり――」
「食事のことではないんだ。酒で、正確性が微量にでも落ちるのは、避けたいしな」

 アイリスは、食事する彼の楽しげな様子に不安を煽られた。

「あの……そういえば目的が別にあるとか。何をなさるつもりなんですか?」
「簡単に言えば〝仕返し〟」
「え」
「騒ぎを起こすのは俺ではない。先に手は打っておいてある」

(先に手を打った……? つまり、何か仕掛けたの?)

 そもそも仕返しに意欲的すぎないか。
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