可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
(あ。そういえばヴァンレック様って〝戦い〟が得意だったわ)

 物理的なものだけじゃなかったと、ようやく噂を思い出した。ヴァンレックが恐れられているのは、その確実な戦勝へと導く〝頭脳戦〟も含む。

『我儘娘。それを止める者を排除した』

 その思考に思い至って、アイリスがまさかと考えた時だった。

「さっきので勝ったなんて思わないでよねっ」

 タイミングのいい金切声に、アイリスの肩がビクッとはね上がる。

「……ア、アンメアリー? どうしてここに?」

 振り向くとアンメアリーがいた。彼女は少し酔っているようだ。目は眠そうだが、明確な私怨を持ってアイリスを睨む眼差しだけはぎらついている。

「いつも私が都合よく使っていた側よっ、一度だって口ごたえしたこともなかったくせにっ」

 いつの間にか会場は宴会へと入ったらしい。

 だが、アンメアリーの癇癪を起こした声は、人々の目を集める。

「――また彼女か。品性に欠ける」
「――さっきの話って本当なんだろうか?」
「――侯爵らが逃げたから事実なのでは」

 ひそひそと囁かれているが、アンメアリーは酔って判断能力が少し落ちているのか、気にする素振りがない。
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