可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 その一声を皮切りに、人々は希望と期待が宿った声を上げ始める。

 みんなが奥に避難した場には、気絶するアンメアリーを引きずっている男性の使用人の姿があった。

 いったん控室にでも行っていたようで、そばにはタイをほどいたライノーアル伯爵の姿がある。彼は苛立ったように前髪をかき上げていた。

「伯爵様、彼女はどうしましょう」
「一分一秒でも大人しくしていられないのかっ? しかもなんだこの事態はっ、引き起こしておきながら、ああ、くそ!」

 すっかり結婚の意思はなくなっているように感じる。

 今日だけでいくつもの選択を間違えたのは、アンメアリーだ。この先どうなるのか、アイリスはなんとなく予想がつく気がした。

 その時、建物が揺れた。

 一部分が破壊されたような音と騒ぐ声、悲鳴、土煙が廊下から吹き込んでくる。

 人々が奥に縮こまって恐れ慄く。

「誰か、彼女を預かっていてくれるか」

 ヴァンレックの声かけに、かなり高級な服を着た男が侍従を急ぎ呼んで駆け寄る。
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