可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「ど、どうかしてくださるんですよね?」
「ああ――ちなみに彼女に怪我をさせれば、承知しない」

 告げるヴァンレックの金色の目が殺気で美しく光る。

(彼の無表情が見慣れないわ)

 普段はこう、なのかもしれない。

 相手の男たちは震え上がる。

「も、もちろんです」

 返事をした男たちに連れられることになったアイリスは、慌ててヴァンレックに言う。

「待って! 外の人たちは平気なんですか?」
「魔獣はこの〝匂い玉〟しか目がない」

 アイリスは、人々の怯えようを理解した。

 直接はかぶらなかったにせよ、その匂いが充満している空気をまとって部屋から飛び出したりなんかしたら、魔獣は見逃すことなく食うだろう。

「さあ行きましょう、大公妃様」
「ま、待ってっ、騎士たちもいないのに――」
「問題ない。魔獣より、俺たちのほうが強い」

 ヴァンレックがにっこりと笑いかけてきた。足元にいるアリムが、ひらひらと手を振ってくる。

「百の群れというわけでもないんだ。任せてくれ」
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