可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 向こうから見守っていた人々が、心強いと歓声を上げる。アイリスは男と侍従たちにそこへと引っ張られた。

 すると、走っている最中に、会場にある数か所の出入り口から爆音が上がった。

 ハッと目を走らせると、そこには蜘蛛のような頭や、カマキリの胴体に狐に似た頭を持った魔獣たちが突入してきた。

 悲鳴が会場内を包み込んだ。

(――お、大きい)

 猛毒や、溶かしてしまう唾液などを持つとされている魔獣は、どれも馬より大きい。

 それらが入口を自分たちのサイズに造り替えて、なだれ込む。

 粉塵が舞う中、それを弾くように強烈な銀色の光が起こった。

 次の瞬間、会場に現れたのは魔獣よりさらに迫力満点の大きな狼だ。その頭部分に両手で毛を握り、座っているアリムの姿がある。

 ――おおおぉおぉっ。

 魔獣と狼の咆哮が空気を揺らした。

 その瞬間には、両者は恐ろしい速さで互いに向かって駆け出していた。

 大きな獲物のほうが目につきやすいのか、それとも脅威だと感じ取ったのか。魔獣は狼のもとへ駆け、攻撃を仕掛ける。
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