可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 だが、狼は荒れ狂った獣のように一つの隙もなかった。

 魔獣たちが周囲から一斉に攻撃しても、顎で嚙み砕き、爪で無残にも引き裂き、尻尾さえも強烈な武器にして魔獣を吹き飛ばす。

(会場がすごく壊れていくわね……)

 なんだかわざと大暴れしている気がした。

 ヴァンレックが獣姿で戦うのを見たのは初めてだから、アイリスの気のせいなのかもしれないけれど。

 ただ、近くにいるライノーアル伯爵は、破壊っぷりを嘆いている。

 彼の足元でアンメアリーは一度目を覚ましたが、

「きゃー! 野獣と魔獣大戦んんんんんん!」

 と令嬢らしからぬ騒がしい声を上げるなり、また気絶したのを、貴族たちがやかましそうに睨んでいた。

 アイリスも少しだけ呆れた。

(でも、アリムは大丈夫なのかしら?)

 お披露目にいいとヴァンレックは言っていたが、彼の激しい戦いっぷりに、アイリスはアリムが頭から振り落とされてしまわないか心配で仕方がない。

「……大公妃様、あの子供は大丈夫なのでしょうか」

 身を預かっている貴族の男が、落ち着かない様子で口にした。
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