可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 嫌、なんて口にしてはいけないのに、とあとになって気付く。

「こんなのだめ、動かなくちゃ」

 自分に言い聞かせるように慌ててベッドを降りる。

 窓辺に置かれた机の引き出しを開け、手紙を書くための用品を準備した。

(役目を終えたのならヴァンレック様のそばを離れないと……彼を困らせたくない……)

 ヴァンレックを前にしたら、彼が契約終了を告げてもそばにいたいと、みっともなく泣き縋ってしまいそうな予感があった。

 妹の結婚式だけでなく、披露宴でもうまく騒ぎを誘導した。あんなこと思い付けるのは国の最強の騎士であり、誰からも恐れられる大公、ヴァンレックその人くらいしかいないだろう。

 なんとも楽しそうだったし、アイリスも胸はスカッとした。

 実のところ腹黒さも立派にお持ちなんですね、と感想は浮かぶものの、それでも口元には笑みが浮かんでしまう。

 そういうところも気にならないくらい、彼のことが好きだった。

 いや、そういう一面も『好きだなぁ』と、騒ぎを眺めながら実のところ思っていて――。
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