可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「アリム」

 低くていい声が聞こえた。

(大公様がすぐそこに? まずいわ、忘れて楽しんでいたのを見られちゃった!?)

 どうしようと思って動けないでいる間にも、アリムがブランコを飛び降りて向かう。

「悪い害獣は倒した?」
「ああ、何も問題なかった。いつなら足音に気付いて迎えに出てくるだろう。それだけ楽しかったのか?」
「うんっ、アイリスと一緒だったらとっても楽しかった!」

 ひえぇと思いながらアイリスはおそるおそる立ち上がり、怖いけど確認せずにはいられない心境で、ゆるやかにそちらを見た。

 そこには駆け寄ったアリムを、両腕で抱き上げた高身長の美丈夫がいた。黄金色、と思わずにはいられない豊かな髪を見て一瞬『狼』よりも『ライオン』が頭に浮かんだのは、あまりにも溢れ出る美ゆえだろう。

(恐ろしいが美しい、てこういう意味だったのねっ)

 アイリスは彼の美貌にも驚いた。

 二十八歳のヴァンレック・フォン・ヴァルトクス大公は、アイリスがまばたきを忘れてしまうほどの美しい男だった。
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